▼市民活動も違法に・・・

 あなたが何気なく撮した写真をネットに掲載したとしましょう。その写真が「特定秘密」に相当するものが写っていると認定されれば、あなたは逮捕される。そのような危険性を孕んだ法律案です。しかも何が「秘密」かも「秘密」だというのです。

 「秘密を守る法律」が必要ないとは言いません。日本版NSC(国家安全保障会議)に関係するアメリカなど外国との秘密情報交換に必要というのであれば「防衛」「外交」に限ればよいのであって、現在提案されている法案はそれ以外に「スパイ活動など特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」が加わっています。

 テロリズムについては「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」とされています。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」したと認定されれば「テロリズム」として処罰される可能性があります。

 この法律によって取り締まりの対象とされるのは政治家や官僚、ジャーナリストだけではなく一般国民も幅広く監視対象とされています。公務員だけでなく民間人にも重い秘密保持義務を課し過失でも処罰されます。マスコミや一般市民が情報にアクセスする行為も処罰の対象となり「教唆、共謀、扇動」として処罰される可能性があります。

 自民党の石破茂幹事長は11月29日付の自身のブログで、特定秘密保護法案に反対する市民のデモについて「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と批判した。市民の主張もテロと同一視し、国民の表現の自由を広範に規制する目的があることは明らかです。

▼原発情報も特定秘密に・・・

 「福島第1原子力発電所事故」関連の情報や「汚染水問題」も「テロ防止」とされれば「特定秘密」に指定される可能性が高く、フクシマ事故後に報じられた「原発構造」なども報道すれば処罰の対象とされるかもしれません。

 「Speedi」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報が公表されず、多くの人が放射能の流れる方向に逃げたため必要以上の被爆をしました。今後、この法律が成立して「Speedi」が秘密に指定されれば永久に国民に知らされることはないでしょう。将来「原発事故」が起きても国民には知らされない可能性もあります。

▼官僚が情報を私物化

 小野寺五典防衛相は11月20日の参院国家安全保障特別委員会で、防衛秘密に指定された文書が5年間で約3万4000件廃棄されていたことを明らかにしました。

 1945年(昭和20年)8月15日~16日は天気は良いのに「霞ヶ関」上空は曇っていたそうです。軍人や官僚が、自分たちに都合が悪いと思った書類を全部焼き捨てていた煙りのためでした。全国の官公署にも書類の焼却処分が命令されていました。国民の税金で集めた「情報」を官僚は私物化してているんです。それは今も同じです。

 アメリカは、政府高官の電話の会話もテープにとって公文書におこして残します。内容を非公開とする場合でも、文書そのものは存在することが明示されますす。「公文書は国民のもの」という社会的なコンセンサスがあります。

 しかし、日本の場合、公文書は官僚によって恣意的に管理されています。勝手に秘密に指定し、勝手に捨ててしまうのです。これは歴史に対する冒涜(ぼうとく)で納税者に対する犯罪と言ってもよいと思います。

 そればかりではなく、後世に歴史を検証することが出来ません。従って歴史に学ぶことが出来ず、同じ過ちを犯すことになるのです。

 また、この法律にはハトメがありません。何でも官僚の思い通りに「秘密指定」ができるのです。つまり「何が秘密かも秘密」なのです。法律の「付帯決議」など何の役にも立ちません。国会議員にさえ秘密の内容が明かされないのです。

▼正当性のない議員が何故?

 11月20日、最高裁は去年の衆院選挙での一票の格差をめぐる訴訟で、1票の価値に最大で2.43倍の格差があるのは「違憲状態」である判決を下しました。また、11月28日、広島高裁岡山支部は「一票の格差」が最大4・77倍だった7月の参院選は違憲だとして、岡山選挙区の選挙を無効としました。
 現在の衆参両院議員の正当性が問われているのです。こういう時期に、国の将来を左右するような法案を強引に通すことは、到底許されません。

 自民党は昨年の総選挙でも今年の参院選でも、この法案についてマニフェストには全く記載していませんでした。ならば丁寧な説明と時間をかけた慎重な審議が必要です。それなの、何故短い臨時国会の期間中にどさくさのうちに成立させようとするのでしょうか?まさに議会制民主主義の危機です。

▼68年前に時計の針を戻す

 この法律案は戦前の軍機保護法、国防保安法、治安維持法を合体させたような稀代の悪法で、安倍総理の言う「戦後レジュウムからの脱却」の総仕上げとも言うべきものです。この背景になる考えは「国民主権」を排し68年前の「官僚独裁」の時代に戻そうというものです。

 情報を私物化し何でも秘密にしたがる霞ヶ関の「官僚システム」は、これで完全に何でもアリの戦前の状態に戻ったことになるのです。

 この法律が成立すれば、日本は「軍機保護法」などがあった68年前に逆戻りします。歴史の歯車を逆に回わそうというわけです。これは、日本版「国家安全保障会議」とセットになっておりアメリカの意向にそうものです。さらに「集団的自衛権」の拡大解釈で、事実上憲法解釈を変更し、日本を世界中で戦争が出来る国にしようとしています。これで、アメリカの尻馬に乗って世界中に軍隊を送れば、日本はたちまち「テロ」の標的になり「世界一安全な国」ではなくなります。それこそ、東京オリンピックなど夢のまた夢となるでしょう。

 この法律が通った時が「戦後が戦前になる」瞬間ということになります。恐ろしいことです。

▼官僚に「魔法の杖」を渡すのか?

 「大東亜戦争」(戦後は太平洋戦争と言われていますが)が行われていた68年前、当時の軍事官僚を中心とした「官僚システム」のリーダーたちは「軍事機密」と称して負け戦を隠して戦争を継続し、東京をはじめ日本全土のほとんどの都市が灰燼に帰すまで、更に原爆が広島、長崎に落とされ、更にソ連が参戦するまで戦争を止めようとしませんでした。その間、国民の目、耳、口は「軍機保護法」などで完全に塞がれていたのです。

 私は1945年(昭和20年)4月13日、東京都豊島区にいて、当時中学1年になったばかりでしたがB29が落とす焼夷弾が雨あられと落ちる中を逃げて歩きました。この時の空襲で家族に怪我はありませんでしたが、我が家は跡形もなく焼けました。この城北大空襲は、豊島区域の7割を焼失、焼失家屋34,000戸、罹災者161,661人に及び、B29から投下された焼夷弾は3月10日の下町大空襲を上回るものでした。
 「大東亜戦争」の体験者は少数派となり、軍事官僚や内務官僚を中心とする当時の「官僚システム」の暴虐ぶりを知る者は少なくなっています。彼らは「軍事秘密」と称して自分たちに都合の悪いことは全部隠して「一億総ザンゲ」などと言って「敗戦責任」を国民に押し付け、責任は一切とりませんでした。私は当時を知る一人として、再び「官僚システム」に「秘密」を操る「魔法の杖」である「特定秘密保護法」を渡すわけにはいかないと思っています。

▼日本の将来の経済発展が遅れる危険も

 更に、様々な技術情報が各省毎に「特定秘密」とされれば「宇宙開発」や「感染症」などの研究が阻まれることになります。学際的に研究成果を発表したり発展させることは困難になり、技術イノベーション能力は一層遅れ、日本は世界の技術開発競争に大きく遅れをとる恐れがあるのです。
 つまり日本の様々な分野で墨塗りが横行し社会は活性を失います。これは将来の「日本の経済的発展と安全保障」の障害となる恐れのある大問題なのです。

▼まるで漫画のような・・・

 特定秘密保護法案について、政府が 9月に行ったパブリックコメントでは約9万件の意見が寄せられ、そのうち 77%が反対でした。ところが、先月国会に提出された法案は、基本的な部分に変更はなく、パブリックコメントは全く生かされていません。意見の詳細な結果も公表されず聞きっぱなし状態です。
 また福島で行われた公聴会で全員が反対や懸念を表明しているのに何の反映もあれませんでした。公聴会をセレモニーと化するなどは国会の自殺行為ではないでしょうかか?

 また「野党と話し合って改訂した」と称して「維新」や「みんなの党」などと国会外で協議した結果「秘密の期間を60年」と前より延ばしたり「総理大臣に第三者的にチェック」をさせるなどと、まるで漫画のようなことをやって恥ずかしい思わないのでしょうか?また国民を小馬鹿にしているのでしょか?
 いずれにしても急いで成立させることには反対です。国民にとって必要性は全くありません。害があるだけです。「秘密保護」が必要なら、時間をかけて国民にきちんと説明するべきです。今国会では「廃案」にすべきです。

 このような「悪法」を子どもたちに残すことはできません。後は参議院の審議で廃案にもっていくしかありません。与野党を問わず参議院議員にメール、FAX、手紙、電話などで「反対」の意思を伝えましょう。(磯浦康二 ’57文新)