吉田慎一氏(朝日新聞上席執行役員 コンテンツ統括・編集担当 )

新聞報道は機能不全

(2)吉田慎一氏朝日新聞

 1995年以降IT化が進みコミニケーション革命の中で、それまで新聞、テレビが主流だったがネット社会への相対化が進んでいる。現在の新聞報道は機能不全に陥っている。「昔とった杵柄」路線ではやっていけない。
 最大の敵は惰性だとして3つの理由を挙げた。
 第1に新聞は政治で起きたことを説明できないままに現実が先に進む。現実が先に進み首相が変わってしまうなど・・・。
 第2に記者がビッグピクチャーが描けない。ある事象に対する意味や背景が描けない。(遠景が描けない)そこで、「としたもんだ・・・報道」というものがはびこる。「”欧州の経済危機”では、ヨーロッパで何が起きているか判らない中で、日銀が為替介入するかどうか?など、よく理解できない事象が起きた時は、そのような時のために「としたもんだ」というパターン化した紙面作りをする。
 第3に知らないことを書く技術がない。例えば3.11のような大災害、フクシマ原発事故などのように、新聞記者が誰も判ってない、知らない事象が起きた時、政治がだらだらと発表することを書くだけだった。現場で感じたことを、判らないなら判らないと書く技術が必須だが、それがない。
「最大の敵は惰性だ」
 「最大の敵は惰性だ」の対策として次のようなことを行った。
(1)「脱記者クラブ、脱マンツーマン」政治部と遊軍を組み合わせる。
(2)「政治・経済取材センター」を実験的に作り「国際経済」「金融危機」のチームを作って取り組む。
(3)「調査報道の推進」昨年9月「30人位で特別報道センターを作り、調査報道を進めている」「プロメテウスの罠」(特別報道部)はその一つである。
 今年の1月の「福島の除染がインチキ報道」も特別報道部である。
 また海外でも、ロンドンにいても、フランス、アフリカもカバーする。
 専門記者の養成。例えば「介護の専門記者」を養成する。
 組織の取材か?個人の取材か?が議論されてきたがパターン化していた。
個人の持っている構想力やセンスを生かし、いかに組織に再編成するか?

 「急速に進むデジタル化」
 新聞の読者は80%は高齢者で、若い人はデジタル情報の時代となっている。
そこで、私たちは「紙」も作れば「デジタル」も作るという新しいモデルを
個々の記者の構想力やセンスを生かしていくために、組織ジャーナリズムをリモデリングする。
 この2年間、朝日の記者にツイッターをやってもらった。
(1)ツイッター プライドと品位   30人位
   150万人  ツイッターで取材、発表する
      1人  百万人 200人 フォロー
(2)新聞記者の個人の力が大事。ジーナリズム教育が必要」と結んだ。