■講演テーマ:
夢の実現~私の「食」のストーリー
―アパレルからオーダーメイド型世界各国料理ケータリング事業の展開へ―
■講師 寺脇加恵(てらわき かえ)さん(2000年法学部法律学科卒)
    フードプロデューサー・シェフ
■日時 2014年5月21日(水)18時30分~21時 
■場所 ソフィアンズクラブ  
■参加者数:30名

写真1 正面寺脇加恵さんRIMG72748
写真:寺脇加恵さん

▼プロローグ

「ゴールデンウィークに駒沢公園の『肉フェス』にいらした方はいますか?」という司会の黒水則顕さんの問いかけから、5月の三水会講演会はスタート。2日前にアメリカのフードイベントから帰国されたばかりの寺脇さんだが、疲れた様子も見せず登場された。

「私は、2000年に法律学科卒業しましたが、在学中3年生の時にアメリカで起業をしました。その当時は、ファッション業界で10年間アパレル企業を経営し日本法人も作りました。ところが、経営が軌道にのってきたところで、雇っていた社員に横領をされ、多額の資金を奪われました。その後まったく異なることをしようと思い飲食業界に転向して7年目になります。」

と寺脇さんは淡々とした落ち着いた語り口で、自己紹介をはじめられた。

清楚でエレガントな容姿とは対照的に、論理的でビジネス感覚がしっかりした起業家の横顔を持つ寺脇さんの講演に会場は「すごいな」という雰囲気になり、寺脇さんの話に耳を傾けた。

写真3 RIMG72746講演の様子
写真:講演会の様子

▼学生時代“ビジネスチャンスは何か”の視点で海外旅行

学生時代は旅行が好きでアルバイトをしては、海外旅行をしていた寺脇さんだが、単に旅行を楽しむだけでなく、ビジネスチャンスにつながるものは何だろうかという視点をもって旅行をするようになり、最初のアパレル関連の会社を起業することになった。

もともと門限もあり厳しい家庭で育った寺脇さんだが、旅行するための資金を効率よく得て頻繁に旅に行きたいと思い、ある先輩に相談したところ、「海外で価値があり、日本でポテンシャルのニーズはあるけれど、まだ、日本では、売られていないものを見出し、ビジネスにつなげてみてはどうか」というアドバイスをうけた。

▼最初は「アンティークアパレル輸入業米国法人」を起業

そこで、内外価格差が大きい古美術品に目をつけ、海外で調達したもののパッケージングを変え、寺脇さん独自の味付けをした製品を販売して、成功をした。大学在学中にハワイで古美術や雑貨を扱うアンティークアパレル輸入業米国法人を起業した。寺脇さんは京都の図書館に通ったりして古美術の猛勉強をした。「受験勉強より一生懸命勉強しました」と寺脇さんは当時を振り返った。

卒業を前に就職活動もしたが、結局自分の立ち上げた会社経営を続ける道を選び2006年に日本法人も設立した。「周囲の友人は、優良企業に就職していたので、最初の2年は大変不安でストレスが多かった」と寺脇さんは語った。その後会社の経営は順調だったが、社員の一人に会社のお金を横領されアパレル会社を閉じることになったのが転機となり、まったく異なる事業である現在の飲食業界のケータリング会社を立ち上げることになった。

アパレル業で買い付けをしながら、世界約50ヵ国を巡った先々で食文化、調理法に興味をもち、体得していた経験を活かすことになった。

写真6 RIMG72744講演中の寺脇さん
写真:講演中の寺脇さん

▼「ケータリングビジネスに参入」―新しい自分なりのビジネスモデルを目指す

寺脇さんは、冷静に分析を行い自分の考えたビジネスモデルを軸にケータリングビジネスに参入された。

日本の飲食業界は、職人の世界で14歳くらいから現場での修行に入るのが通例。当時寺脇さんは30歳になっていたので、どうやってこの15年の遅れを克服できるのかが問題であった。そこで自分の資本でも可能で、自分がイニシアティブをとることができ、調理・サービス・集金のサイクルの回転の速度を速めることが可能な戦略をたて、その結果「ケータリング」という形で飲食業界のビジネスに転向した。「3~4年で人の3倍努力すれば軌道にのせられるのではないかと思いました」と寺脇さんは淡々と語ったが、調理師の免許もとり並みの努力ではなかっただろう。

次の問題は、自分一人でやっていたので、営業する時間が全くなかったことだ。寺脇さんは、その対応策も分析し2つ以上の基軸のビジネスをもち、その重なる部分をやっている人が少ないことに着目。その部分に集中をするという戦略をたて「ケータリング」と「メニュー開発」という2つの軸を中心に事業を展開していくことを考えたという。

そうこうするうちに会社には、以前関係したファッション業界の人から口こみでレセプションのケータリングの依頼がきたり、お店のメニュー開発も依頼されようになった。さらに元留学雑誌編集部勤務の方からは、海外へいく日本人を増やしたいという相談を受け、ハンガリー大使館を皮切りに小学生に海外の食文化を体験してもらう食育の活動も始めた。

2010年12月に財団法人「International Women’s Club Japan」を設立しその副理事も務め、現在までに50ヵ国の在京大使館で小学生向けの食育・多様性の教育イベントを手掛けている。日本に大使館シェフがいない国や政権が不安定な国の食文化を紹介する活動も行っている。さらに日本企業の飲食チェーンの海外ビジネス展開のコンサルティング、広告コンテンツの制作、農林水産省等の地域活性化イベント、大使館の催事等さまざまな分野の仕事をこなしている。

寺脇さんの会社「BeautyBar」のケータリングの特徴

資料㈰ケータリング事業 サービスコンセプトとその後につながった案件
資料「ケータリング事業 〜サービスコンセプトとその後につながった案件〜」(クリックで拡大)

▼3つの事業の気づきと成長―学習的発展サイクルを意識

 寺脇さんは多分野で活躍をされているが、ご自分の事業概要を資料のようにまとめられた。

資料㈪<事業概要> 主な3つの事業分野を成長サイクルに
資料「<事業概要> 主な3つの事業分野を成長サイクルに」(クリックで拡大)

 寺脇さんは①食広告コンテンツ制作、②ケータリング、③飲食店プロデュースという3つの事業の関連性をいかして、自分のビジネスは成長していると述べられた。

「最近、自分が手掛けてきたビジネスを具体的に、感覚ではなく文字にしてみると気づきがあり、さらに大きな案件を担当できるようになり成長したような気がします。今まで企業に勤務したことはありませんが、図にあるような自分の3つの事業の学習的発展サイクルを意識しながら継続してきた結果この年になって効果がでてきました」と語った。

最後に講演会の前にアメリカで開催された海洋資源の食イベントの紹介や事業実績を語られた。

資料㈫2006年ケータリング法人化 これまでの実績概略
資料「2006年ケータリング法人化〜 これまでの実績概略」(クリックで拡大)

写真8 RIMG72732質問コーナー
写真:質問コーナーにて

▼質問コーナー

日本の飲食業界の現場は、男性社会で最初はなかなか相手にしてもらえなかったが、英語力を武器に各国の大使館での仕事の依頼も直接受けられるメリット等の話題がでた。実際に駒場東大前・日本近代文学館内カフェの寺脇さんが手がけられたメニューに興味を持ち参加した人もいた。

写真10 RIMG72755懇親会乾杯
写真:懇親会の様子

淡々と語るフードプロデューサーの寺脇さんだが、父親が税理士という関係で、子どもの時からお金については、厳しい躾を受けたという。そのため「学生時代にアルバイトの時給数百円の目先の単発的な収入のために時間を使うより、学生時代にしかできない勉学に勤しみ将来役立てれば、もっと大きな収入につながる」と言われた話も興味深く伺った。今では、松濤館空手成人の部2段(M&Aアドバイサリー)というまったく異なる側面の持主でもある。寺脇さんは、学生時代から起業して17年目、自分のスタイルをもつビジネスウーマンに成長された。和食(WASHOKU)が「世界遺産」になった機会に寺脇さんには、和食を世界に普及させる“食の大使”としての活躍を期待したい。

現在「世界の朝ごはん」の本、テレビ出演等、最近メディアの登場が増えている。数年前に三水会講演会に登場された料理研究家浜田美里さんとならび料理の分野でも活躍するソフィアンがいることを知り大変充実した会であった。まさに旬の人に生の講演を聞くことができる三水会の企画に感謝したい。

写真12 懇親会初参加の木下和子さんRIMG72781
写真:初参加の木下和子さんと・・・

▼追加情報

寺脇さんの会社BeautyBar( http://www.Beautybar.jp)は、オーダーメイド型世界各国料理ケータリング事業を中心に500人規模の企業レセプションからウェディングまでイベント趣旨に合わせて会場装飾から実際の料理・ケータリングサービスを行っている。飲食店の立上げのメニュー開発も手がけ、駒場東大前の「日本近代文学館内bundan cafe」、東京大学農学部「フードサイエンスカフェ」、「神楽坂 鳥半」、「汐留カレッタ46階 美寿思」など40店舗を手がけている。5月始めに駒沢公園で開催された『肉フェス』http://food-nations.com/exhibitor.html にも参加された。

●5月30日発売の「大好き! ブレックファースト (タツミムック)」[辰巳出版] の「世界の朝ごはん」にも登場。 その他テレビ出演もされ活躍中。http://www.tg-net.co.jp/item/4777813096.html 

まとめ:山田洋子(1977外独)


<プロフィール>
寺脇加恵(てらわきかえ)さん
2000年 上智大学法学部法学部法律学科卒業・在学中起業
2006年 有限会社curation設立 代表取締役
2010年 株式会社BeautyBar設立 フードプロデューサー・シェフ
2014年設立中 株式会社Nurse& Co
財団法人 International Women’s Club Japan 副理事
(趣味)映画、歌舞伎鑑賞 / 釣り/ 旅行
(資格)調理師 /TOIEC 883点/ 松濤館流空手成人の部2段 M&Aアドバイザリー