■講演テーマ:『視聴率15%を保証します!』 ―テレビ番組誕生秘話とヒットの法則を語る―
■日 時: 2014年11月19日(水) 18:30~20:30
■場 所: ソフィアンズ・クラブ
■講 師:高橋 浩(たかはしひろし)さん (’67年文学部英文学科卒)
東映アニメーション株式会社取締役相談役
■参加者数:30名
(プロフィール)
1967年NETテレビ(旧日本教育テレビ・現在のテレビ朝日)入社。主に番組企画・編成分野の仕事に携わる。特に『日曜洋画劇場』『土曜ワイド劇場』をはじめ『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『美少女戦士セーラームーン』等の大ヒットアニメ番組を多数立ち上げる。2002年に㈱東映アニメーションに移籍し、2003年代表取締役社長に就任する。現在は取締役相談役。
▼オープニング
黒水(司会)「最近まで東映アニメーション代表取締役社長をされていた高橋浩さんは、1967年にNETテレビに入社された後、さまざまなテレビヒット番組を担当されました。テレビ朝日、東映アニメーションでも数々の大ヒット作品を生み出されました。最近小学館新書から著書『視聴率15%を保証します!』を出版されましたが、実は私も購入しました。すばらしい先輩がいらっしゃることを誇りに思います。今日は、まさにテレビ番組に携わってきた長年の軌跡とともに、あのヒット番組を生んだ「発想法」と「仕事術」をお聞きします」(拍手)
▼冒頭で・・・
高橋「黒水さんから今回著書に関して話してほしいと言われました。たぶん皆さん、本を読んでいらっしゃらないということでお話させていただきます」
という挨拶で始まった。
ご自身の生い立ちを振り返りながら、人生は「縁」と「運」が大切なことを強調された。
▼学生時代の何よりの財産はシェイクスピア研究
高橋さんは、広島県生まれで、その後東京中野付近に移り、小学校2年から富山県に移り、高校卒業後、東京に戻り上智に入学。昭和42年4月にNETテレビに入社された。
高橋さんは昭和42年卒だが、3年次の家族の東京転勤まで学生寮に2年ほど入られた。当時の授業は厳しく、10年かけても卒業できるのかと不安に思われたそうだ。「2回遅刻すると1回欠席扱いになり、なおかつ語学の授業は、鍵がかかるという厳しいものでした」と語られた。
上智大学時代は英文学科に在籍され、担任は1年~4年まで、ピーター・ミルワード先生だった。「昨年88歳のピーター・ミルワード先生の講義を聴きましたが、学生時代は、勉強から金銭的な相談まで、すべて先生に引き受けてもらいました」と当時を振り返られ、何よりも大きな財産だったのは、先生から4年間シェイクスピアを学んだことだったそうだ。
「副担任の渡部昇一先生は、ドイツ留学もされドイツ語にも堪能な先生です。テレビは子どもに悪いといって押入れにしまわれた先生ですが、私がテレビ局に入社したと言ったら『知的生活とかけ離れたか』と言われました」と苦笑しながら語られた。高橋さんは、卒論がシェイクスピアとは時代は異なるノーベル文学賞を受賞したT.S.エリオットについてで、詩のような言葉で劇を創るこの二人の作家が同じシーンでも異なる言葉を使っているという違いについて論文を書き、教授の間で、高い評価を得たという。当時、「卒論とはこう書くべきである」という3名の学生代表にも選ばれ、後輩を前に話をすることになった。
「『私は、卒論より、就職のほうが大切である』という話をして、卒論の書き方については、しゃべりませんでした。しかし、後に私の話を聞いて朝日新聞社に入社したという後輩に出会ったので、自分の話が役立ってよかったと思いました。卒業以来大学で話をするのは今日で2回目ですが、この本のことより老後のプランの話でもした方がよかったかもしれませんね(笑い)」とユーモアを交えて、サラリーマン時代についての話題に進んだ。
会場の様子
▼人生に大切な「「縁」と「運」
著書『視聴率15%を保証します!』のタイトルは出版社がつけたもので、この著書は、自分のサラリーマン人生の経験を振り返り、新しいサラリーマン人生を送る人へ参考にしてもらいたいと思い書いた。基本的には、「人との縁と運」で仕事はうまくいったり、いかなかったりするということをベースに書いてあるという。
「人との縁」とは:高橋さんは、広島県生まれだが、東映の亡元社長岡田茂さんも広島県の出身で、高橋さんの実家の福山市駅前の料理屋を、岡田茂さんが訪れたことがあるそうだ。東映は、テレビ朝日の創立メンバーという関係もあり、高橋さんは東映アニメーションにスカウトされたという。
また、漫画家の藤子不二雄氏も富山県の出身だが、同郷ということで、高橋さんが、日本テレビで失敗し、テレビでは無理といわれたアニメ『ドラえもん』を引き受け、平日のベルト編成と日曜日に放送したところ、今でも続く39年の長寿番組に成長した。高橋さんは、小さな縁が仕事に影響することは多く、縁を大切にして、仕事を続けられてきたという。また、そういう縁があってこそ、やってこられたとも語られた。
「運」とは:「ふとしたことから入社した年に、名うてのテレビマンの人しかとれない賞をとったので、上司から『何でもいうことを聞いてやる』と言われ、『英語の使える仕事をやりたい』という希望を伝え、『日曜洋画劇場』を担当することになりました。同番組では、外人相手の映画の購入から始まり、どういうときに、どういう映画の放送がよいのかということを学び、大変勉強になりました。それからテレビ番組の編成部に移り、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』などテレビ放映を反対する上司を説得して放送に踏み切りました。それらがいまだにやっているテレビ長寿番組になりました。担当した番組は多く、企画まで行い編成マンとして、『ドラえもん』『暴れん坊将軍』、ストーリーもの等、すべて担当したが、唯一例外は『西部警察』でした。そしてテレビ朝日で58歳のときに、東映アニメにこれまで経験をかわれてヘッドハントされました」と語られた。
▼サラリーマン人生のキャッチフレーズ―「案 印 運 縁 恩 」
高橋さんは、「業績を上げてくれ」といわれて転職したが、その都度自分に対してのキャッチフレーズを創ってこられたそうだ。
東映アニメの社長時代には、新卒採用の筆記試験の前に10分ほど社長にしゃべってほしいという依頼を受けた、300名受けても最後は10名しか入社できない。その日の夜中に290人もの落ちる人のためにプレゼントとして、人生は「あいうえお」の「あ」で始まり、最後は「ん」で終わるという話をして「あいうえお」のキャッチフレーズをプレゼントした。すなわち「案 印 運 縁 恩 」が大切であると話をされた。
⇒ 編集担当注)詳細は著書『視聴率15%を保証します!』小学館新書をぜひご覧ください。
▼テレビ番組ヒットの「ノウ・ハウ」がイッパイ―著書『視聴率15%を保証します!』
高橋さんは、70歳を迎えられ、2年ほど前に社長を辞め会長になった。さらに今年、相談役になるのを機に東映アニメの若手社員に企画の「ノウ・ハウ」を教えるヒントになるような本を出したいと思って1年前から書き出した。自費出版はお金がかかると思っていたところ、あるパーティーで小学館の幹部に会い、その人にその原稿を見せると「出版したい」と言われた。新書での出版ということで、中高年層も含む一般向けの本として売り出すことになった。そこでテレビ番組の裏話を増やし、経営的な内容や人の悪口は一切入れないようにしたという。
ちょうど三水会の前日に、高倉健さんが亡くなられたということで、放送局としては、当然主演映画を放送することや思い出話を語られた。『日曜洋画劇場』の洋画枠が日本映画まで枠が広げられたとき、高倉健の映画を放送されたこと。高橋さんが、長年担当された『日曜洋画劇場』やスポンサー会社からの条件をいかに克服したか等の裏話も、淡々と語られた。
最後の質問コーナーでは、学生時代のことから日本のアニメ業界の抱える話題まで、いろいろな思いを語られた。なんといっても高橋さんが学生時代に学ばれたシェイクスピア研究の深いバックグラウンドが、物事を複眼的にとらえる性格を形成されたようだ。
講演会後の懇親会で・・・
▼感想
講演を聞きながら、自分が子どものときに、淀川長治さんの解説で有名な『日曜洋画劇場』、そこで流された華やかなレナウンのテレビCMまで一生懸命見たことを思い出した。自分にとって、大変思い出深いテレビ番組の背景にソフィアンの先輩がいらしたことを知り、興味深く伺った。今後とも若いテレビマンのご指導を期待します。
高橋浩著『視聴率15%を保証します』(小学館新書)もあわせてぜひご覧ください。
『視聴率15%を保証します』高橋浩著(小学館新書)
http://www.shogakukan.co.jp/books/09825217
著書と高橋さん