安倍晋三首相は、中国が9月3日に行う「抗日戦争勝利70周年」記念行事に、反日的ではなく融和的な行事なら、と条件付きで出席の意向を示した。

戦後70年談話記者会見で、首相は「私たちは歴史に対して謙虚でなければなりません」「これからも謙虚に歴史の声に耳を傾けながら、未来の知恵を学んでいく」と述べた。談話では「過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」とも明言した。

であれば、この記念行事は、中国との関係の過去と未来に真正面から向き合うまたとない機会だ。ここは条件など付けずに、たとえ反日的な行事であろうと堂々と出席すべきだ。出席することで対外的にも好印象を与えることができるだろう。

首相は談話で「我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである」と訴えた。さらにこの原則を「世界の国々にも働きかけてまいります」とも語った。

中国は日本を含め周辺国とさまざまな点で摩擦を引き起こしている。「平和的・外交的に解決」を意図するなら、首相はせっかくの招待に背を向けず、正面から中国と向き合うべきだ。(稲村哲 ’68文英 出版プロデューサー)(2015年8月22日 朝日新聞 オピニオン&フォーラムに掲載)