1968(昭和43)年、文英卒の稲村哲です。マスコミソフィア会常任幹事で、会報「コムソフィア」の編集長を20年に亘り仰せつかっております。
1年生の時、ロゲンドルフ先生の授業で、先生が「私のいちばん好きな日本語は」と言って、黒板に「義憤」と大書されたことを今でも鮮明に覚えています。それは当時から日本人に「義」とくに「正義」に対する気概が希薄な空気を読み取っていたからではないかと推測しました。赤ら顔になって怒気を含んだように感じられました。
50数年も前の話ですが、翻って先の衆院選での与野党のやり取りを見聞きしていると、どこに「義」があるのかと疑わしいことだらけでした。マニフェストとやっていること、やろうとしていることが、言行不一致あるいは整合性がないこと甚だしい。
首相が代わったのはいいにしても、就任前の約束と後ではすでに真逆に近いことを言っている。これを私は「義」を伴わない”言葉の詐欺“と呼んでいます。いま、投資話などで詐欺師が横行していますが、政界にはこの手の詐欺師がいかに多いことか。
出来ないと分かっていながら出来る、あるいは可能性があるなどと含みをもたせる。いつでも約束は反故にできるなど、あいまいにして濁す言葉など枚挙にいとまが無い。
ロゲンドルフ先生は「卒論では I think…」は使わないように、と注意された。「思うのは自分の勝手で、読む人にあいまいな、どうとでも取れる感じを与えてはいけない」の教えです。
私は40数年間、出版プロデューサーを職としてきて現役でもありますが、あいまいな表現に十分気を配ってきたのも、ロゲンドルフ先生の厳しい教えがあってこそと、今更ながら改めて感謝しています。
2021.11.20
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
会報「コムソフィア」編集長
稲村哲(1968文英)