マスコミ・ソフィア会会員の皆さま:
今月の「幹事会だより」は、山田洋子(1977年外独卒)が担当します。現在、マスコミ・ソフィア会の広報関係の常任幹事を担当させていただいています。
「奈良の小旅行から」
私の母は奈良が好きで15年くらい前から、毎年正倉院展の時期に奈良に通っている。私もここ10年ほど、母に同行。2泊くらいの駆け足で、訪れる場所、ルートは毎年同じである。今年も奈良へ行ったが、コロナ禍の時とはうって変わり、修学旅行や団体旅行客が増えて活気づいているようにみえたが、コロナ後の奈良の地域経済について不安に感じることがある。例えば奈良市内から唐招提寺に向かう国道沿いには、空洞化した団体旅行客用の宿泊施設が目立ち、薬師寺の駐車場は、隣接していたレストランの建物がなくなり、駐車場の広さばかりが際立つ。
毎年法隆寺の南大門に向かう参道にあるS食堂で昼食をとり店主と会話するのを楽しみにしている。10年くらい前は、海外の団体観光客にあふれ、この参道もにぎわっていた。そして2018年頃このS食堂の隣にあった大きな土産物店がなくなり宿泊施設になった。しかし開業と同時にコロナとなり、隣の新しい宿泊施設にはいつも人気がない。S食堂の店主は、どうにか食堂の営業を継続していて今年も訪れたが、すぐ近くのT堂という修学旅行用の食堂が閉店していて参道の景色が寂しくなっていた。店主の体力が持たず店を維持するのが難しくなったため閉店したらしい。久しぶりに会うS食堂の店主は目の回るような忙しさで、元気だったが少し疲れていた。観光客が急に増え、近隣店舗の閉店で、客が集中し、完全な人手不足のようだ。自分も「T堂のようにならないように頑張らないと」という彼女の言葉が印象に残った。
日本全国同じような現象が起こっているのかもしれないが、法隆寺参道のS食堂の手作りの味と店主との会話が思い出話にならないようにしたい。行政は地元の個人商店にもっときめ細やかな施策を打てないものかと思った。
帰宅後検索した奈良県の「令和2(2020)年奈良県観光客動態調査報告書」では、観光客は2019年→2020年で41.7%減 消費額は対2018年→2020年で981億円54.3%減(うち外国人86.6%)。また、「令和3(2021)年奈良県観光総合戦略」には、旅館・ホテルの客室数を2019年9735室から12,000室に増やすと言う目標を掲載している。いわゆる箱物が増えても、集客につながるとは限らない。視点を変えると、中国の団体旅行客の存在がコロナ前は大きかったようだ。
2022.11.15
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
山田洋子(77外独)