マスコミ・ソフィア会会員の皆さま:

今月の「幹事会だより」は、山口茂(1957年経経卒)が担当します。現在、マスコミ・ソフィア会の常任幹事を担当させていただいています。

 人生とは不思議なもので、偶然の出会いがその人のその後を決めるようだ。

 1952年私が大学1年の時、亡くなった前マスコミ・ソフィア会会長磯浦さんとは同期生でした。ある日、彼と雑談中に私が電気に詳しいことを知って演劇部室に連れていかれ、入部を促され、入ることになりました。当時演劇部は、新劇華やかな時代で後に日本の演劇界で活躍した仲間が部屋に出入りして多彩でした。私は電気に詳しいことからT.S.エリオット作「カクテル・パーティ」など数々の上演舞台の照明を任されました。

 3年の時には、NTV(日本テレビ)が学生演劇を放映したのですが、その時局員にテレビ照明の仕方を教わりました。私は、有楽町の朝日イブニング・ニュース社でバイトをしていました。確か卒業する頃、バイトで有楽町駅前のそごうデパート8階にあったNTVホール(現よみうりホール)に宣伝用チラシを配りに行ったら、NTVの照明部長にばったり会って、これがきっかけでNTVの照明に首を突っ込むことになりました。

 NTVのスタジオ照明を6年ほどしていた時、バイト時代に知り合ったカメラマンに偶然会いました。彼は、慶応出で新聞社をやめて当時創刊された『週刊テレビガイド』でタレント撮影をしていました。先輩の大谷隆三さんが大きな貸写真スタジオを作るので、「出来たら彼と来てほしい」といわれNTVから移ることにしました。当時の貸写真スタジオは、町の写真館より一回り大きな程度でしたが、広告代理店大手の電通をはじめ各広告代理店やメーカーから車、電気冷蔵庫、家具等の大型広告写真撮影の申し込みが殺到し、ほとんど寝る暇がありませんでした。

 ある日、カメラマンがドイツの車のフォルクスワーゲンのチラシを見せて「このような写真を撮りたい」と言ってきました。でも当時の写真スタジオの照明設備は、アップライトですからチラシのような写真は無理なのでそれなりのライティグですませました。

 これは照明の専門的な話になりますが、アップライトだと上から直接照明するため、車のあちこちにライトが映るので車のツヤを無くすためにスプレーで消す作業をします。その作業を無くすためには、スタジオがドーム状で間接照明(パネルライティグ)の方がベターです。3年半過ぎた頃、ロケその他における要望が多いので、私は独立し特に自動車の写真スタジオの照明会社を立ち上げました。たまたま車の「A」社に打ち合わせに行った時、自社スタジオの計画を教えられました。そこで私は、天地5m上、幅15m、奥行き10m上、天地どちらもR1.8mのドームスタジオを提案したところ、日本初の自動車専門スタジオが出来上がりました。

 新車は売り出すまで企業秘密です。そのため各社社内スタジオが絶対必要です。でもスタジオ設計の秘密は漏れ漏れで、4~5年後には各社で自社スタジオが作られました。さらにレンタルスタジオまで出現しました。現在でも車の撮影は、変わらずパネルライティングを使っています。テレビコマーシャルで車の照明を見るたびに今でも懐かしい思い出に駆られます。

2022.12.09
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
山口茂(57年経経)

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