マスコミ・ソフィア会会員の皆さま:

5月の「幹事会だより」は会報『コムソフィア』編集に携わっている稲村 哲(文英1968)が担当します。

原稿を依頼するときに「書いていただきたい」とお願いする。
「打ってください」とは言わない。でも、ほとんどはパソコンで文字を打って、メールで文章を送ってくる。原稿を万年筆やボールペンで書くことはほとんどない。会報『コムソフィア』の原稿も、そうである。

ちょっと前までは、文章の文字を読み取り、この人に似合わず綺麗な字を書く、あるいは意外と悪筆だなどと評したりした。
達筆と思われた著者がいた。原稿に判読できない文字があり、目の前で確かめたところ、「自分でも読めないが、わかりますか?」と逆に尋ねられた。そんな文字が散見されて困った。「それなら文章を変えましょう」と、またもやサラサラ。確かに達筆のようではあったが。

また、編集者がパソコンで原稿を作成して、私が目を通した。確か「島嶼」だった。「ルビを振ったら、どう?」と指示したところ、「……??」読めないと言う。どうして打てたのだろう。

山梨県の山中湖畔に「三島由紀夫記念館」がある。代表作『豊饒の海』の生原稿がケース内にあり、流麗な文章に目を奪われたものだ。と、同時に、編集者が朱で勢いよく文字の大きさを「号」、「ポイント」で指示しているのが文章と拮抗して清々しかった。こうした気をもらった。

葉書や手紙類を整理していると、丁寧な文字・文章ではあるが「乱筆、乱文にて失礼」などとある。ああ、いい人だなあと思い出す。また、大胆に書き上げたような色紙もあり、整理の手が滞ってしまう。

文は人を表し、文字は人柄・性格を表す。書道家で筆跡鑑定人の著作をプロデュースした。礼状を出したところ、筆跡を鑑定されて戻ってきた。微細に私の性格が8割がた指摘されていて驚いた。書き文字が益々珍しくなるこれからは、文意をAIが読み取って鑑定することになるのだろうか。
なんだか味気ない。せめて葉書くらいは手書きで、もらいたいものだ。

2023.05.12
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
会報「コムソフィア」編集長
稲村哲(1968文英)