幹事会だより
早いもので、2022年7月より2度目の「幹事会だより」を執筆することになりました。
今回は現役らしく、現在、籍を置く新聞社を通して、新聞の置かれた現状を少しレポートします。私が入社した1997年は、日本の新聞発行部数が頂点を極めました。その3年後の2000年。約5,370万部(一般紙+スポーツ紙)の発行部数を誇っていました。しかし、昨年2022年はそれが約3,000万部にまで落ち込み、直近のABC協会加盟76紙の8月部数合計数は約2,604万部。実に、2000年の半分以下に落ち込んでいます。
その理由は様々で、巷間言われるようにスマートフォンの普及、媒体の多様化、読者の高齢化、そして何より、新聞社自体の体質改善、自助努力の不足もあると思います。うちの新聞社も例にもれず、収支改善のために海外の一部の支局を閉鎖するなどしています。デジタル化の波に乗ろうと手を尽くしていますが、事業化できたと言える迄には至っていません。
新聞が衰退して、誰が困るのでしょうか?実は、民主的な市民社会を生きる我々自身かもしれません。1本の信頼に足る記事を紡ごうとすると、担当記者が書き、<サブキャップ>や<キャップ>が手直しし、部門の<デスク>がさらに推敲。字句に間違いないか<校閲部>が目を凝らし、見出しを付ける<整理部>に回って紙面化されます。第一、それらに携わる記者も一朝一夕では育ちません。私の所属する販売局の立場で言えば、毎日の定時配達を担う販売店も、一度崩壊すると簡単に再構築できないインフラです。
新聞が担ってきた「権力監視」「偏りのない裏取りされた情報提供」「地域社会の問題提起」などの役割は、新聞社の健全な経営基盤の上にもたらされるリソースと言えます。
先述しましたが、新聞社自身が自己変革を遂げねばならない一方で、そんな新聞の役割をご理解いただき、どの新聞でも構いませんのでご購読、応援いただけると感謝に堪えません。
2023.09.18
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
増田智昭(1990経経)