マスコミ・ソフィア会会員の皆さま:
今月の幹事会だよりは、鈴木顕宏(1996経経)が担当します。
◆体験して分かったWebメディアの悲しい現状と課題
皆さん、最近、Web媒体の記事を見て「内容が薄いな」と感じることが増えていませんか。
「タイトルに興味を引かれ読んでみたが、掘り下げが浅く、知りたいことも書かれていなかった」とがっかりする体験。
私はビジネス系メディアを中心にフリーランスの編集者をしているので、この分野の記事を日々チェックしますが、最近、そうした体験をする機会が増えました(さすがに新聞社の記事は大丈夫ですが、有名経済誌の版元や歴史あるWeb媒体でも、以前は感じなかった「あれっ」と思うことが多くなっています)。
なぜ、そうしたことが起こるのか。Web媒体の編集長をしたこともある私には思いあたることがありまして・・・。
Web媒体も「見てもらうこと」が重要なのは他のメディアと同じです。
しかし、Webメディアがやっかいなのは、「その反応がすぐに分かること」「配信できる記事本数に制限がないこと」です。
この2つは記事の反応が悪かったときに悪く作用します。
Web媒体では、記事の反応をページビュー(閲覧)数や会員獲得数(会員登録しないと2ページ目以降が読めない媒体の場合)などで確認しますが、読者の反応が鈍く、想定する成果(目標とするページビュー数や会員獲得数の合計)に届かなかった場合、編集長は「配信する記事本数を増やし、成果を得よう」と考えます。
こうなると、現場は大変です。
実はWeb媒体は投資やコストがかかる割に売上・利益が稼ぎにくので、編集部は小人数で、それぞれが長時間労働をしています。また、原稿料も決して多くないので、記事を書くライターは生計を立てるために数多くの原稿を書いています。そうした中で「もっと記事本数を増やせ」となるわけですから、制作現場がパンクをしてしまうのです。
当然、こうした状態では成果が出るわけもなく、困った末に「世間の関心事だからと専門分野以外の記事もつくろう」などという変なことも起こります。分からないことだらけの中、インターネットで調べた付け焼き刃の知識で書いた記事が深く、読み応えのあるものになるわけもありません。
その結果、記事の質が低下してしまう。これが最近、Web媒体で内容が薄い記事が増えている理由だと感じています。
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
鈴木顕宏(1996経経)
2024年3月の幹事会だよりでも書きましたが、昨年は仕事のかたわら、長野県でワイン用ブドウづくりの手伝いをしてきました。