マスコミ・ソフィア会会員の皆さま:

今月の「幹事会だより」は手島真理子(1973文仏)が担当いたします。

平和へ谺する音楽の森🎵

 私の父は大正初め頃の生まれでしたが、なぜかヴァイオリンが好きで、子供の頃ヴァイオリンを独学で弾いていたと言います。私は「先生に習わないで、弾けるようになるかしら?」と半信半疑でしたが・・。そして私が生まれた時、天才少女としてデビューし、1940〜70年代にかけて活躍したヴァイオリニスト、巖本真理からその名を取って名付けたのだと。結局私はヴァイオリンを習う事はなかったのですが、家の中では父の好きなヴァイオリン協奏曲がよく流れていました。

 そんなDNAのせいか、今回ヴァイオリン製作工房を見学する機会に恵まれました。お知らせしている「大人の社会見学〜製作工房を訪ね、ヴァイオリンの魅力に迫る〜」がそれです。最近テレビ、雑誌などメディアで脚光を浴びている中澤創太さん(2009外独 / 日本ヴァイオリン代表取締役社長 / ヴァイオリン鑑定家 /キュレーター)が経営する工房です。創太さんはヴァイオリン展覧会動員数歴代世界一を記録して旋風を巻き起こし、世界の音楽界から注目を集めている方です。

 この機会に、創太さんの著書『TOKYO ストラディヴァリウス 1800日戦記 』( 日経BP出版)と弦楽器製作・修復家である父、中澤宗幸氏著『ストラディヴァリウスの真実と嘘 』( 世界文化社)を稲村編集長に教えていただいて読んでみました。創太さんの本は、史上最大規模のストラディヴァリウスが集結したフェスティバルを開催するため、5年の歳月をかけて様々な困難や障害を乗り越えた奮闘記で、人々の心の扉を開き、信頼を勝ち得ながら繋がって行く事で世界がいかに大きく広がるものかをつくづく感じさせられます。
 また父親、宗幸氏の本は、ヴァイオリン製作家が深い森の中にまで分け入って適した木材を探したり、ストラディヴァリウスのような優れた名器は演奏家の奏でた音色を蓄え、成熟しながら生き続けるという話など、なんと奥深い世界なのかと驚きます。そして二人がヴァイオリンに計り知れない情熱を捧げ何を目指そうとするのかが、次第に見えてきます。

 森のように深く、宙のように広く、光の如く煌めく・・平和に繋がる音楽の力を信じ、支え続ける人々に敬意を表しつつ。

見学会のご報告は改めていたします。

2025・06・01
マスコミ・ソフィア会常任幹事
手島真理子(1973文仏)