マスコミ・ソフィア会会員の皆さま
今月の「幹事会だより」は龍野晋一郎(1992文社)が担当します。現在、新聞社の世論調査部という部署で記者をしています。
◆愛国心・リベラル・中道とは
さて、アイルランド出身の神父で、本学英語学科で教鞭をとられたドナル・ドイル先生が昨年5月に永眠されました。学生時代に授業を受けることはなく、お目にかかったのは、取材を通じてでした。2005年、当時の天皇家の長女紀宮さま(黒田清子さん)のご結婚の際、ドイル先生が交流を持たれていたことを知り、インタビューをしたのがきっかけです。
ソフィア会でも副会長を務められ、日本とアイルランドを結ぶ橋渡し役も果たされた先生の遺徳を残そうと取材をしています。まだ新聞記事にできるかは確定していませんが、何らかの形にしたいと思っています。
もう一人、とても懇意にしていたのが、社会学科の教授だった吉野耕作先生です。2018年に亡くなられました。カルチュラル・スタディーズという手法で、ナショナリズムを研究する気鋭の学者でした。
昼食をご一緒するなど定期的にお会いしていたのですが、研究室を訪ねた際、その後にドイル先生にお目にかかる約束になっていたので、「ご一緒しませんか」と誘ったことがあります。SJハウスにて両先生の初対面が実現しました。研究の説明を受けると、ドイル先生は「吉野先生にとって愛国心やナショナリズムはずいぶん悪者なのですね」と微笑み、「母国のアイルランドでは否定的に捉える考え方はあまりありません」と話されました。
しばらくして吉野ゼミにゲストとして参加した際、当時、「日本人の国家観」をテーマに読売新聞が実施した世論調査(面接方式)について学生たちから質問が相次ぎました。中でも「日本国民であることを誇りに思うか」という設問に対して、「愛国心の強調につながり、恣意的ではないか」「定義が人によって異なるような抽象概念を尋ねることは調査にそぐわないのではないか」などと手厳しい指摘がありました。
私からは「不適切かどうかは別として、同じ設問を1980年から続けており、その経年変化をみるだけでも意味があるのでは」と答えた覚えがあります。でも、学生たちからの問いかけはやはり重要だったと思い直しています。
抽象概念の扱いというのはとても難しいです。例えば、政治的立場を表すために使われる「保守」「リベラル(または革新)」いう言葉。2017年の読売と早大の共同世論調査で、40歳代以下の有権者は「日本維新の会が最もリベラル」と捉え、18〜29歳と30歳代では「共産党は保守」と見なし、18〜29歳では「自民党の方が共産党よりもリベラル」と考える有権者が多いという、政党観に対する世代間の意識のずれが明らかになりました。永田町の論理で見れば、「右派対左派」の対立が最も大切に見えるのですが、その枠組みは既に崩れていました。リベラルを強調する政党に対して若者たちは冷ややかにみているようです。
翻って、今月8日に投開票された衆院選。立憲民主党と公明党が合流して結成された新党が名称に掲げた「中道」という言葉も、保守と革新・右派と左派の「真ん中」を意味とか、仏法の「中道主義」を根底にするとか様々な受け止めがあり、浸透が難しかったようです。そもそも「護憲・ハト派」をリベラル、「改憲・タカ派」を保守というくくりで捉えることが難しくなっているのですから。
ともあれ、大きな分岐点を迎えている政治、日本だけでなく世界の情勢を、ドイル先生や吉野先生は天国でどう見られているのか。考えさせられる真冬の選挙戦でした。
2026年02月09日
マスコミ・ソフィア会常任幹事
龍野晋一郎(1992文社)

高崎名物のダルマとともに。選挙戦の必勝ダルマへの目入れは、差別や偏見を助長すると視覚障害者団体から要請があり、テレビ局や新聞社では自粛する傾向も(写真はクリックで拡大できます)
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