マスコミ・ソフィア会会員の皆さま

今月の「幹事会だより」は、増田智昭(1994 経経)が担当します。マスコミ・ソフィア会の常任幹事会には、ほとんど参加できずに申し訳ないのですが、オールドメディアに現役として勤務する者として、昨今の新聞社事情について一筆執ってみたいと思います。 

「新聞を取り巻く環境今昔」 
 私が新聞社に入社したのは、1997年4月1日。実に29年目に突入した勘定になるのですから、月日の早さに驚嘆するばかりです。新聞を取り巻く環境も大きく変わりました。今回は数字の面から少しご説明させていただきたいと思います。日刊新聞の今昔について、少々お付き合いください。 

 希望をもって入社した1997年は、一般日刊紙の発行部数が、最大を極めた年でもありました。日本新聞協会によると、1997年が約5376万部もの日刊新聞部数が発行されていたのに対し、直近2026年1月部数では、約2176万部とおよそ4割の部数にまで落ち込んでいます。驚くべき減少です。紙の新聞はもはや高齢者のメディアとなっており、年代別にみると最大の購読世代は70歳以上で、次の世代が60代です。その世代はほぼ定年を迎えており、年金生活における節約や目が見えにくくなるなどの理由から、徐々に新聞市場から退出しつつあります。中核的な読者層である団塊の世代が、全員75歳以上の後期高齢者になった「2025年の崖」を昨年迎えて危機的な状況です。一方、若年層の紙離れ、活字離れは一貫して拡大しており、「年を取ったら新聞を読む。」とはなりそうもありません。 

 そうなると新聞社はどのようになってゆくのでしょうか。「部数減→収入減→人員や取材拠点の削減→取材力・配達力の低下」の悪循環に陥りつつある社が増えています。自らの勤める新聞社も2ケタ以上あった海外支局は現在4支局に、社員数も3割ほど最盛期から減少しました。ただ、うちの新聞社は経営体力に恵まれ、まだ穏やかな縮小傾向と言えます。紙の代わりに電子メディアや、新聞社ならではの事業・イベントなどで稼げば良いと思われる方もいらっしゃると思いますが、電子版で既存の収益をあげている新聞社はほとんどありません。このままでは、ネット上のフェイクニュースに対抗しうる地道な「取材力」が低下してゆく可能性があります。米国ではさらに状況が悪化しており、休廃刊で地域の新聞を失った地域では、自治体選挙の投票率が下がり、候補者数が減り、現職有利の傾向が顕著にみられたそう。その結果、監視の目を失った行政や議会が緊張感を失い、不正や怠慢、放漫財政を招く傾向が大きい。わが国でも他人事ではありません。 

 「新聞なき政府と政府なき新聞を選ばねばならないとしたら、躊躇せずに後者を選ぶ」とは、第3代米大統領 トーマス・ジェファーソンの言葉。今さら「新聞」を過去の地位に復権させなくてはと言いたいのではありません。情報を伝える手段は、何も紙でなくても良いと思いますが、丹念な取材と裏付けで正しい情報を伝える役割を、誰かが担わなくてはならない。日本大学と並んで、「新聞学科」がいまも存在する上智大学の関係者(特にマスコミ・ソフィア会の皆様には、オールドメディア・新聞のこれからについて共に考えていただけると幸いです。

2026年03月03日
マスコミ・ソフィア会 常任幹事
増田智昭(1994経経)